口腔外科専門医が学ぶ、口腔機能と全身の健康
第69回(公社)日本口腔外科学会総会・学術大会をオンデマンド配信で聴講しました。
同学会の専門医であるため、知識、技術のアップデートのためには学会参加が必須です。
専門医として医療を提供するため、1)医療安全、2)医療倫理、3)医療関連法規・医療経済、についての教育講演を受講したほか、ミニレクチャーとして、1)難治性口腔異常感症、2)転ばぬ先の杖「口腔機能」を診るうえで要チェックの服薬歴、を聴講しました。
教育講演は、医療に携わる者としての心構えを再認識することができました。
ミニレクチャーでは、①有病率が1.73%とといわれる「口腔異常感症」と、②服薬による「口腔機能」について学ぶことができました。
「口腔異常感症」の症状としては、口腔内のヒリヒリ、口腔乾燥、ザラザラ、口臭、味覚異常などで、下記の疾患起因による唾液減少が考えられます。
1)代謝異常:糖尿病、甲状腺機能異常(亢進)、貧血(鉄欠乏、巨赤芽球)、アルコール・喫煙
2)神経異常・薬剤性:ストレス・精神疾患、脳神経外科疾患、神経障害、薬剤性
3)唾液腺異常:膠原病(シェグレン症候群、他)、老人性変化、放射線障害、腫瘍、薬剤性
「口腔機能」関連副作用の検索数が最も多いのが、「食欲低下」のキーワードでした。
食欲低下を引き起こす原因は、食べない?食べたくない?とも考えられ、食欲低下を起こしやすい薬剤には下記の薬剤が挙げられます。
1)傾眠傾向をまねく:睡眠薬、神経障害性疼痛治療薬、抗不安薬、抗アレルギー(ヒスタミン)薬、亢てんかん薬、認知症治療薬であるNMDA受容体拮抗薬
2)消化管障害をおこしやすい:解熱鎮痛薬(NSAIDs)、ステロイド、骨粗鬆症などの治療薬であるBP系薬剤、消化器症状に使用される坑コリン薬、アルツハイマー病などに用いられるAchE阻害薬
3)有効血中濃度域が狭く中毒症状のリスク:心疾患などに用いられるジゴキシン、気管支喘息などに用いられるテオフィリン
食べられない、咀嚼・嚥下運動を低下させる薬剤として下記の薬剤が挙げられます。
1)錐体外路症状・反射の低下:抗精神病薬(定型〉否定形)、制吐薬、中枢性鎮咳薬
2)筋弛緩作用による:睡眠薬、坑てんかん薬、抗不安薬、Ca拮抗薬、筋弛緩薬
口腔疾患は、むし歯、歯周病だけでなく感覚、咀嚼・嚥下に関わるものもあり、口腔機能の重要性を再認識しました。
練馬区
はじめ歯科医院 中村橋