その皮膚炎、銀歯が原因かも?歯科金属アレルギーと治療法を解説
長引く湿疹や口内炎…実は“銀歯”が関係していることがあります。
原因と対処をわかりやすく説明します。
先日、日本歯科大学九段ホールで開催された
第16回 日本メタルフリー歯科学会総会・学術大会(2025年11月22〜23日)に参加しました。
大会テーマは「メタルフリー 未来への展望」。
歯科の未来に向けて、金属を使わない治療の安全性や可能性を学ぶ貴重な機会でした。
目次
まず「メタルフリー」って何?
「メタルフリー歯科」とは、
歯科治療で使用される金属をできるだけ使わず、金属アレルギーのリスクを避ける治療のことです。
金属アレルギーというとアクセサリーを思い浮かべる方が多いですが、
実は歯科金属が原因で全身に症状が出ることがあるのをご存じでしょうか?
歯科でアレルギーの原因になりやすい金属とは?
歯科で使用され、アレルギーの原因になりやすいとされる金属には、次のものがあります。
・ニッケル
・クロム
・コバルト
・パラジウム
・金銀パラジウム合金
これらは、詰め物・被せ物・入れ歯の一部などに使われることがあります。

じゃあ、なぜアレルギーの原因になる金属を歯科治療に使ってきたの?
理由は大きく2つあります。
① 歯科用金属は“丈夫で使いやすい”
強度が高く、加工しやすく、長持ちするため長年使用されてきました。
② 保険適用材料として一般的だった
特に金銀パラジウム合金(いわゆる銀歯)は、費用負担が少なく、広く普及した歴史があります。
金属の代わりはある? → はい、あります
近年は材料が大きく進化し、金属を使わない“メタルフリー材料”が増えてきました。
特に代表的なのがセラミックとレジン(樹脂)系材料です。
銀歯の代わりに選ばれる「CAD/CAM冠(キャドキャム冠)」とは?
銀歯に使われる金属が心配な方や、できるだけ金属を避けたい方に、近年選ばれることが増えているのが「CAD/CAM冠(キャドキャム冠)」という白い被せ物です。
CAD/CAM冠は、
コンピューターで歯の形を設計し、専用機械で精密に削り出して作る保険適用の白い材料で、金属を使わないため、アレルギーのリスクを抑えられるのが特徴です。
主なメリットは次のとおりです:
・金属を使用しない“メタルフリー”の白い被せ物
・銀歯のように黒く見えず、見た目が自然
・樹脂とセラミックを混ぜたハイブリッド素材で、口の中に馴染みやすい
・セラミックより費用負担が少ない(保険適用)
・銀歯の置き換えとして現実的に選べる
銀歯が必ずアレルギーを起こすわけではありませんが、「金属を減らしたい」「白い歯にしたい」という方にとって、CAD/CAM冠は身近で導入しやすい選択肢です。
詳しくは、当院の「CAD/CAM冠」の解説ページで紹介しています。
より自然で長持ちする白い歯「オールセラミック」という選択肢も
銀歯を白くしたい方、より美しく・長期的に安定した素材を選びたい方には、「オールセラミック」という選択肢もあります。
オールセラミックは、その名の通り金属を一切使用していない“純粋なセラミック素材”で作られた被せ物です。
当院の専用ページでも詳しく解説していますが、主な特徴は次のとおりです。
● 自然な透明感で、天然歯に近い仕上がり
光を透過するため、前歯のような見た目が重要な部分でも違和感が出にくく、“歯がキレイになった”と実感しやすい素材です。
● 変色しにくく、長期的に安定しやすい
樹脂を含まないため、年数が経っても色の濁りが出にくく、長期的に美しさを保てます。
● 金属アレルギーの心配がない
完全なメタルフリー素材のため、金属が溶け出す心配がありません。
● 歯ぐきの黒ずみ(ブラックライン)が起こらない
銀歯や金属フレーム特有の“歯ぐきの黒い影”も出ません。
CAD/CAM冠(保険の白い歯)と比べると費用は高くなりますが、見た目の美しさ・長期安定性・金属アレルギーの安心感がそろった素材です。
銀歯を白くしたい方はもちろん、
「より質の高い治療を選びたい」「長く持つ素材にしたい」
という方におすすめできる選択肢です。
詳しくはこちらで紹介しています。
セラミック矯正
セラミックは金属じゃないの?安全なの?
セラミックは“陶材”で、金属とは全く違います。
特徴は──
・体に馴染みやすい
・変色しにくい
・汚れがつきにくい
・金属アレルギーの心配がない
審美歯科で用いられる白いセラミック冠は、メタルフリー治療の中心的存在になっています。
口の中の金属がアレルギーを起こす仕組み
学会では、金属アレルギーのメカニズムを改めて確認しました。
金属が長期間口の中にあると、唾液で微量に溶け出した金属イオンが体内に取り込まれ、免疫が「異物」と判断することで炎症が起こることがあります。
これを 遅延型アレルギー(Ⅳ型)と呼び、症状はゆっくり出てくるのが特徴です。
症状の例:
・口内炎が長引く
・口の中がピリピリする
・手足・首・全身の湿疹
・原因不明の皮膚炎
歯科金属が原因の場合、患部が“口の中ではない部分”に出ることもあります。
検査方法と対応
皮膚科で行われるパッチテストや、歯科での材料調整を組み合わせて診断します。
今回の学会でも、皮膚科との連携が非常に重要であることが強調されました。
皮膚科を受診するとき、歯科の話はするべき?
はい、必ず伝えたほうが良いです。
皮膚科の先生は全身の皮膚症状から原因を探しますが、「歯の詰め物」が原因だと患者さんが言わない限り、そこにたどり着けないこともあります。
FAQ(よくある質問Q&A)
Q1. 銀歯が本当にアレルギーの原因になることがあるのですか?
A. 可能性はあります。銀歯に含まれる金属が唾液で微量に溶け出し、体が反応して遅延型アレルギーを起こすことがあります。
Q2. 銀歯が原因のアレルギーはどんな症状が出ますか?
A. 長引く口内炎、口の中のピリピリ感だけでなく、手足・首・全身の湿疹や皮膚炎として現れる場合があります。
Q3. 金属アレルギーかどうかはどうやって調べますか?
A. 皮膚科で行うパッチテストが一般的です。歯科の詰め物や被せ物の情報を皮膚科に伝えることで、診断がスムーズになります。
Q4. 銀歯の代わりになる材料はありますか?
A. はい、あります。金属を使わない材料として、レジン(樹脂)・CAD/CAM冠(保険の白い被せ物)・オールセラミック(自由診療) など複数の選択肢があります。
・レジン(樹脂):保険で白くできますが、耐久性がやや低く変色しやすい素材です。
・CAD/CAM冠:保険適用の白い被せ物で、金属を使わずアレルギーの心配が少ない素材です。
・オールセラミック:最も自然で美しく、変色しにくく長期安定しやすい素材です。
どの材料が適しているかは、歯の場所や咬み合わせなどによって変わります。
ご希望に合わせて最適な素材をご提案します。
Q5. 皮膚科に行くとき、銀歯のことを話すべきですか?
A. 必ず伝えた方が良いです。皮膚炎の原因が口の中の金属だった、というケースもあるため、診断の大切な情報になります。
まとめ
今回の学会テーマである「未来への展望」は、これからの歯科治療が“より身体に優しい選択肢へ進んでいく”ことを示していました。
長年使われてきた銀歯や金属材料は、確かに丈夫で便利な面があります。
しかし一方で、金属アレルギーのように、目に見えない負担を身体に与えてしまう場合があることも分かってきています。
もし、
・原因がわからない皮膚炎が続いている
・金属アレルギーが気になる
・銀歯を白くしたい、体に合う材料に変えたい
そんな思いがある方は、“お口の中の金属”がヒントになるかもしれません。
歯科材料は進化し、金属を使わない治療も選べる時代になりました。
一人ひとりに合った方法を一緒に考え、安心して治療を受けていただけるよう、丁寧にサポートいたします。
気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。
あなたの体と口に、より優しい選択肢を一緒に探していきましょう。

練馬区 口腔外科専門医
はじめ歯科医院 中村橋


































