口腔外科専門医 はじめ歯科医院 中村橋練馬区 日本歯科大学新潟病院口腔外科臨床講師 日本口腔外科学会専門医

はじめ歯科医院

顎関節症のセルフケアにガムは使える?噛み癖を整える方法を歯科が解説

― ガムを使った簡単トレーニングで、顎の負担や噛み癖を整える方法を紹介します。―

『顎関節症の患者さん(成人期の口腔機能障害)に対するガムトレーニングの活用』というWEBセミナーを受講しました。
今回のセミナーはガムトレーニング研究会による「ガム噛むトレーナー」資格取得を促す目的もありましたが、歯科医院としての視点から見る“ガムの活用”は、また別の意味を持ちます。

顎関節症は年代を問わず見られる疾患で、
・口が開けにくい
・カクッと音がする
・顎が疲れやすい
など、日常生活に支障をきたすことがあります。
原因は、片側で噛む癖・姿勢・ストレス・舌の癖など複数の要因が絡み合います。

今回学んだのは、こうした“悪癖”の改善を目的にガムをトレーニングとして活用する方法です。
「ガム=口臭予防」というイメージが強い中、顎関節症のケアという視点はまだ一般に浸透していないかもしれません。


実はガムは“全身”にも影響している?

ガムを噛むことには意外と知られていない働きがたくさんあります。
日常で何気なく行っている「噛む」という動作は、口だけでなく脳・体・心のコンディションづくりにも関わっているといわれています。
ここでは、分かりやすい実生活の例を交えながら紹介します。

① 脳血流の増加
ガムを噛むと脳の血流が増えるという研究報告が多くあります。
「頭がよくなる」など断定はできませんが、脳が働きやすい状態にスイッチが入ると考えられています。

例えば…
・受験勉強で集中力を切り替えたいとき
・午後の仕事中、眠気が出てきたとき
・パソコン作業で頭がぼんやりしてきたとき

こうした場面で“噛む刺激”が脳を活性化するきっかけになることがあります。

② 覚醒作用/鎮静作用(緊張対策にも)
ガムを噛むリズムは、心拍や呼吸のリズムとリンクしやすく、緊張しすぎても、ぼーっとしていても、ちょうど良い状態に戻す調整作用があるとされています。

こんな場面で役立つかもしれません:
・テスト直前のドキドキ
・ピアノの発表会前の緊張
・面接やプレゼンの直前
・子どもが試合前に緊張しているとき
・車の運転で集中したいとき

実際、プロ野球やメジャーリーグでは試合中にガムを噛む選手が多く、大谷翔平選手、山本由伸投手、佐々木朗希投手が活躍した大会やワールドシリーズの中継でも、ベンチでガムを噛む選手の姿が映ることがあります。

噛む動作が心を落ち着かせ、プレッシャーを和らげる目的で使われていると考えると、日常の緊張対策にも応用できそうです。

③ 身体パフォーマンスの安定
「噛む」ことで
・無駄な筋緊張が取れやすい
・反応速度が変わる可能性
・動作がスムーズになる可能性

などが指摘されています。

これは、筋肉と自律神経のバランスが整うためといわれています。
だからこそスポーツの世界では、
・試合に向けて気持ちを整える
・気持ちを切り替える
・常に一定のリズムを保つ

目的で自然とガムが取り入れられているのかもしれません。

日常でも役立ちます:
・緊張で体が固まる
・イライラして肩に力が入る
・動作がぎこちないと感じるとき

こうした時に、噛むことで“余計な力み”が抜けることもあります。

④ 満腹中枢を刺激
ガムを噛むと、脳の「満腹中枢」が刺激され、“なんとなくお腹が空いた”を落ち着かせる効果があるとされています。

こんな場面で便利です:
・ついおやつを食べすぎてしまう
・夜、ご飯前に何か食べてしまう
・口寂しさで間食してしまう

ガムを噛むことで、気持ちがリセットされやすくなります。

成分による追加作用

ガムには種類によって、カフェインやニコチンなどが含まれているものもあり、
・眠気の予防
・禁煙時のイライラの軽減

など“補助的な”目的で使用されることもあります。

顎関節症とガム。どう関係する?

もちろん、顎関節症の治療はマウスピース(スプリント)や噛み合わせの調整が基本です。
ガムは“治す”というより、症状が改善した後の再発予防や、口腔機能を整えるサポートとして役立ちます。

セミナーでは、
・姿勢を正す
・中等度の硬さのガムを使う
・両側均等に噛む
・強く噛みすぎない

というポイントが紹介されました。

これは、感覚的に噛むのではなく、顎や舌、顔の筋肉を正しく使うためのトレーニングとして行うことが大切です。

どんなガムを選べばいい?

選ぶべきはシュガーレスガム(無糖)。
むし歯リスクを避けるためにも、甘味料入りはおすすめできません。
ちなみに近年、ガム市場は縮小し、グミの消費量がガムを上回っているというデータもあります。
しかし、“噛む”ために適した食品という意味ではガムの独自性は非常に高いと言えます。

まとめ

ガムは単なるおやつではなく、姿勢・噛み癖・顎への負担・心身のリズムなど、私たちが普段気づきにくい「日常のクセ」を見直すきっかけになることがあります。

顎関節症の症状がある場合は、まず歯科でしっかりと状態を確認し、治療で落ち着いた後の“再発予防”や“セルフケア”として、正しい姿勢や噛み方でガムを取り入れる方法もひとつの選択肢です。

「噛む」というシンプルな行動が、毎日のコンディションづくりに思わぬサポートになることもあります。
気になる症状や不安があれば、お気軽にご相談ください。

FAQ(よくある質問 5件)

Q1. 顎関節症のときにガムを噛んでも大丈夫ですか?
A. 症状が強い時期はガムを噛むと痛みが悪化することがあるため注意が必要です。
しかし、症状が落ち着いたあとの“再発予防”として、正しい姿勢・硬さ・噛み方でガムを噛むことが役立つ場合があります。
まずは歯科で症状を評価し、適切なタイミングで始めることが大切です。

Q2. どんなガムを選べば顎関節症のケアに向いていますか?
A. 基本はシュガーレスガム(無糖)を選ぶことが推奨されます。
硬すぎるガムは関節に負担がかかるため、中等度の硬さが目安です。
また、片側だけで噛むのではなく、左右均等に噛むことがポイントです。

Q3. ガムを噛むと集中力が上がるというのは本当ですか?
A. ガムを噛むことで脳血流が増える、心身の状態が整いやすいといった研究報告があります。
プロ野球選手やメジャーリーガー(大谷翔平選手、山本由伸投手、佐々木朗希投手らが活躍したワールドシリーズなど)でも、試合中にガムを噛む選手がいることから、「集中力や緊張コントロールとの関連」が注目されています。
ただし、効果には個人差があります。

Q4. 顎関節症はマウスピースだけで治るのですか?
A. マウスピース(スプリント)は顎関節症治療の基本的な方法のひとつですが、姿勢・噛み癖・舌の癖など“生活習慣の改善”も重要です。
ガムを使ったトレーニングは、改善後のケアや再発予防として取り入れられることがあります。

Q5. ガムの消費が減っていると聞きますが、トレーニングとしての価値はありますか?
A. 市場としてはガムよりグミの方が消費量が増えていますが、「噛むための食品」としてはガムに独自の価値があります。
噛む力のバランス調整、口腔機能のトレーニング、姿勢と噛み癖の改善など、ガムならではの用途があるため、目的に応じて上手に取り入れることができます。

ガムトレーニング

練馬区 口腔外科専門医
はじめ歯科医院 中村橋

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