『口腔ケア』と『新型コロナウイルス感染症』~様々な疾患を含めた口腔ケアの重要性~
Oral Care
1.口腔ケアと新型コロナウイルス
①新型コロナウイルスは唾液腺・舌・口腔粘膜にみられ、唾液からも検出されます。
②無症状感染者から濃厚接触者への新型コロナウイルスの感染リスクを低減させるために日常的な口腔ケアが重要です。
③感染後の重症化・死亡・後遺症は年齢と基礎疾患(高血圧、糖尿病など)のほかに細菌感染症が重要な役割を 果たすことが報告されています。 検出された細菌の多くは口腔に常在している細菌であることから、口腔ケアが重症化のリスクを下げる可能性があることは間違いないようです。
2.口腔ケアと生活習慣病
口腔内細菌は様々な経緯で全身に拡散しています。
①血管系(循環器系)
歯周組織・根尖病巣→毛細血管→静脈→心臓→肺→大動脈→全身に拡散
②呼吸器系
口腔→咽頭→下気道を経て、誤嚥性肺炎を引き起こす経路です。
③消化器系
口腔細菌が胃を通過し腸管に侵入する経路です。
全身に拡散した細菌は慢性炎症を引き起こし、特に脳の視床下部の慢性炎症による糖尿病、各臓器での慢性炎症による発がんに関与しています。
3.口腔ケアによる認知症対策
血管系に侵入した口腔細菌は動脈硬化に関与し、特に脳への悪影響が深刻です。
アルツハイマー型認知症発症に、口腔細菌の一部(P.gingivalis)の関与がほぼ確実であることが解明されました。
4.口腔ケアによる誤嚥性肺炎の予防
毎食後の歯磨き、1日1回の義歯のクリーニング、1週間に1回の専門的な口腔清掃が、誤嚥性肺炎の発生率を減らす、最良の対処法といわれています。
以上より口腔ケアは、現在のトピックスである新型コロナウイルス感染症の感染と重症化の予防ばかりでなく、様々な疾患発現の予防に有効であると思われます。
上記、Dental Products News 239 に掲載された
鶴見大学歯学部深索歯学講座 教授 花田 信弘 氏の内容の一部抜粋引用したものです。