インプラントも「歯周病」になる?インプラント周囲炎の原因・症状・治療・予防について
2026年9月18日(金)、東京国際フォーラムで開催された第56回 公益社団法人 日本口腔インプラント学会 学術大会に参加してきました。
今回の大会テーマは、
「国民から信頼される口腔インプラント治療」
「健康寿命延伸に果たすインプラントの役割」
です。
インプラント治療は、失った歯を補い、噛む機能を回復するための治療方法の一つです。
しかし、インプラントは、
「入れたら、それで治療が終わり」
というものではありません。
治療後も適切なセルフケアと定期的なメンテナンスを続けることが非常に重要です。
その理由の一つが、今回の学会でも取り上げられていた「インプラント周囲炎」です。
今回は学会で学んだ内容をもとに、「インプラント周囲炎とは何か」「なぜ起こるのか」「どのような治療をするのか」「どうすれば予防できるのか」を患者さんにも分かりやすくご説明します。
目次
インプラント周囲炎とは?
「インプラントは人工物だから、虫歯にも歯周病にもならないのでは?」
と思われるかもしれません。
確かにインプラントそのものが虫歯になることはありません。
しかし、インプラントの周囲にある歯ぐきや骨には炎症が起こることがあります。
これがインプラント周囲炎です。
インプラント周囲炎とは、プラーク(細菌のかたまり)などが関係してインプラント周囲の組織に炎症が起こり、さらに進行してインプラントを支えている骨が失われていく病気です。
患者さん向けに簡単に表現すると、
「インプラントの周囲に起こる歯周病に似た病気」
と考えると分かりやすいでしょう。
「インプラント周囲粘膜炎」と「インプラント周囲炎」は違います
ここはぜひ知っていただきたいポイントです。
インプラント周囲に炎症が起こった状態には、大きく分けて、
インプラント周囲粘膜炎
インプラント周囲炎
があります。
インプラント周囲粘膜炎とは?
インプラントの周囲の歯ぐきに炎症が起きているものの、インプラントを支える骨までは失われていない状態です。
早い段階で適切に対応すれば、改善が期待できます。
インプラント周囲炎とは?
炎症がさらに進み、インプラントを支えている骨の喪失を伴っている状態です。
ここまで進行すると、単に歯みがきを改善するだけでは十分でない場合があります。
つまり、
歯ぐきの炎症
↓
炎症が続く
↓
インプラントを支える骨にも影響する
という進行を防ぐためにも、早期発見が重要なのです。
インプラント周囲炎になると、どんな症状が出る?
インプラント周囲炎では、
・インプラント周囲の歯ぐきが赤い、腫れている
・歯みがきのときに出血する
・歯ぐきから膿が出る
・インプラント周囲の歯周ポケットが深くなる
・インプラント周囲の骨が失われる
といった変化がみられることがあります。
ただし注意したいのは、初期には患者さん自身が気づきにくいことがあるという点です。
「痛くないから大丈夫」
とは限りません。
そのため、インプラント治療後は症状がなくても定期的に状態を確認することが重要です。
なぜインプラント周囲炎になるの?
大きく関係するのがプラーク(歯垢)に含まれる細菌です。
インプラントの周囲にプラークが蓄積すると歯ぐきに炎症が起こり、その状態が続くことで周囲の組織に影響していきます。
特に、お口の清掃状態が良くないことや、定期的なメンテナンスを受けていないこと、過去に重度の歯周病があったことなどは、インプラント周囲炎のリスクと関係することが知られています。
だからこそ、インプラントを長く使っていくためには、
「インプラントを入れる技術」だけでなく、「入れた後の管理」
まで含めて考える必要があります。
インプラント周囲炎は自然に治る?
ここは今回の記事で特に重要なところです。
インプラント周囲炎によって骨の喪失まで起きている場合、
「しばらく様子を見ていれば元の状態に戻る」
と考えるのは適切ではありません。
特に失われた骨については、炎症を抑えただけで自然に元通りになるとは限りません。
そのため、できるだけ早い段階で炎症を発見し、進行を抑えることが重要になります。
インプラント周囲炎はどうやって治療するの?
今回の学会では、
『インプラント周囲炎に対する外科治療・レーザー治療を考える』
というシンポジウムを聴講しました。
そこで改めて重要だと感じたのが、
インプラント周囲に付着した感染性の物質、つまり細菌を含むバイオフィルムなどを適切に除去すること
です。
インプラント周囲炎の治療では、病気の進行度や骨の状態などを確認しながら対応方法を検討します。
まずは、汚れや細菌を取り除く
治療の基本となるのが、インプラント周囲に付着しているプラークや歯石、バイオフィルムなどを除去し、細菌が増えにくい環境をつくることです。
現在の臨床ガイドラインでも、インプラント周囲炎ではまず非外科的治療を行い、口腔清掃の改善、リスク因子への対応、専門的な器具を用いた清掃などを行ったうえで、状態を再評価することが推奨されています。
インプラント周囲炎の「外科治療」とは?
「外科治療」と聞くと、大がかりな手術を想像されるかもしれません。
インプラント周囲炎が進行している場合には、歯ぐきを開いて、通常の清掃では届きにくいインプラント表面や骨の状態を直接確認しながら処置する方法が検討されることがあります。
さらに、骨が失われた形や程度などによっては、骨の再建を目的とした治療が検討される場合もあります。
ただし、すべてのインプラント周囲炎で外科治療を行うわけではありません。
どの治療方法を選ぶかは、炎症の程度、骨の状態、インプラントの位置や形態、清掃状態などによって異なります。
レーザーを使えばインプラント周囲炎は治る?
今回の学会ではレーザーを使用する治療についても取り上げられていました。
ここは患者さんに誤解してほしくないところです。
「レーザーを当てればインプラント周囲炎が治る」という単純なものではありません。
インプラント表面の汚染をどのように取り除くかについては、機械的な清掃、薬剤、レーザーなど、さまざまな方法が研究されています。
一方、現在の欧州歯周病学会(EFP)の臨床ガイドラインでは、インプラント周囲炎に対するレーザーの使用について、非外科治療では単独・補助療法とも推奨されておらず、外科治療時のインプラント表面除染でもEr:YAGレーザーを積極的に推奨するだけの根拠は示されていません。
今回の学会で複数の方法について適応症例を比較して学んだこと自体に意味があります。
「レーザーだから優れている」と考えるのではなく、
患者さんの状態に応じて、どの方法をどのように使うのか
を考えることが大切です。
インプラントを長持ちさせるには?
インプラント周囲炎を考えるうえで、治療以上に大切なのが予防とメンテナンスです。
インプラントは人工物なので虫歯にはなりません。
しかし、その周囲には患者さん自身の歯ぐきと骨があります。
そのため天然歯と同じように、毎日の歯みがきや歯間清掃、歯科医院での定期的なチェックが必要です。
特に、
「インプラントを入れてから何年も歯科医院へ行っていない」
という方は、一度状態を確認することをおすすめします。
インプラントのメンテナンスでは何を見るの?
インプラント治療後のメンテナンスは、単に「歯のお掃除をする時間」ではありません。
インプラント周囲の歯ぐきに炎症がないか、出血や膿がないか、清掃状態に問題がないか、必要に応じて骨の状態なども確認します。
つまり、
「悪くなってから治す」のではなく、「悪くなる兆候を早く見つける」
こともメンテナンスの重要な目的です。
インプラント治療は「入れて終わり」ではありません
今回の日本口腔インプラント学会学術大会では、「国民から信頼される口腔インプラント治療」「健康寿命延伸に果たすインプラントの役割」というテーマのもと、さまざまな研究や治療について学びました。
その中でも、インプラント周囲炎について改めて感じたのは、
インプラント治療の成功は、インプラントを入れた時点だけで判断するものではない
ということです。
治療後も患者さんがしっかり噛むことができ、その状態をできるだけ長く維持する。
そのためには、治療前の診断や治療技術だけでなく、治療後のセルフケア、定期的なメンテナンス、そして異常を早期に発見して対応することが大切です。
はじめ歯科医院 中村橋でも、インプラントを「入れること」だけではなく、治療後まで含めた長期的な管理を大切にしていきたいと考えています。
「インプラントを入れてからしばらく検診を受けていない」
「インプラントの周りから血が出る」
「インプラント周囲の歯ぐきが腫れている」
「インプラントを長持ちさせる方法を知りたい」
という方は、一度ご相談ください。



































